◆ 本屋さんのペットコーナーなどに行くと、「誰でもわかる犬のしつけ」、「問題行動、これで解決」など、実にたくさんのしつけのハウツー本が置いてありますね。
◆ 犬を飼っている人なら、一度は手にとって見たご経験があるのではないでしょうか。
これらのハウツー本には、飼育に必要な道具や犬の習性など、特に犬を初めて飼おうという人などには有用な情報も多く掲載されており、ためになる部分もあるでしょう。
◆ しかし、こと「しつけ」「問題行動の矯正」などの項目については、あまり字面を鵜呑みにせず、あくまで参考までに留めておくのがよいと思います。
◆ これらの本に書かれている、例えば「甘噛みの直し方」「飛びつき癖の直し方」「フセの教え方」などについては、あくまで一般論、つまり「比較的多くの犬に効果があった基本的な方法」として紹介しているに過ぎません。
ところが当の犬たちは、我々人間と同じく、一頭として全く同じ性格や思考傾向を持つものはいません。
また、飼育環境や、犬と飼い主さんの関係についても、まさに千差万別です。
ということはつまり、本に書いてある方法を、ご主人様が自分の愛犬にそのまま適用して最大の効果を得られる可能性は、むしろ余り高くないと考えたほうがよいのです。
◆ 例えば、犬の興奮をコントロールするための「ホールド・スチール」や「マズル・コントロール」といった方法は、きちんと犬の性格と状態を見極めたうえで行えば、確かに効果的な場合もあります。が、犬の性格や飼い主と犬との関係によっては、まるで逆効果になる場合も充分に予見できます。
◆ 我々も、例えば「スワレ」「フセ」など基本的な動作を教える際にも、常に犬ごとに微妙に、あるいは大幅にやり方を変えています。それはやはり、犬の年齢・性格・体格・その時々の犬の精神状態と、更には飼い主さんのお人柄までを考えた上で、最善と思われる方法をリアルタイムに取捨選択しながら訓練をしているからなのです。
◆ 最近、初めて犬を飼う方のご相談が増えていますが、そういった飼い主さんには、「せっかく犬を飼うんだから、若い頃からしっかりしつけなきゃ」と決意されている方が多く見受けられ、非常に結構なことだと思います。
◆ しかし、残念ながら、そのような崇高(?)な志をもつ真面目な方ほど、大量の「ハウツー本」をはじめ、かかりつけの獣医さんのアドバイス、さらにはネットの「しつけ相談BBS」からご近所の愛犬家の体験談(「うちの子はこうだったわよ」「そんなのああすれば簡単よ」etc…)にいたるまでの膨大な情報に踊らされて耳年増になってしまい、結局ご自分の理想とは程遠い結果に陥っておられる方が多いようです。
(※「獣医さんのアドバイス」についても、一言申し上げたいことがありますので、それは次の機会に)
◆ 繰り返しになりますが、なにも「ハウツー本」を否定しているのではありません。ただ、書かれていることはあくまで一般論であり、決して「書いてある通りにすれば、ご自身の愛犬に必ず効果がある方法」ではなく、参考程度に留めるべきですよ、ということをお伝えしたいのです。
◆ 犬たちは、マニュアルどおりに操作すれば思い通りに動かせる機械などではありません。
育児のマニュアル本だけで、人間の子供を一生育てようとする親などいないでしょう。それと同じことだと思います。
◆ 大切なのは(ご自分の愛犬の性格などを良く見極めたうえで)最も優先すべき「人と犬との絆」を育むには、愛犬にいま何を教え、何を求めるべきか、日々の試行錯誤の繰り返しではないでしょうか。
そしてどうしても上手くいかなかったり、迷われたりしたときには、我々のような専門家に、気軽に一言ご相談いただきたいと思うのです。